傷つけずにはいられない

先生がいいと生徒はよく学ぶ。私の先生は母親と兄弟。こっちはなにせ幼児だったから無力で、自分の怒りや屈辱を言葉に出来ず、傷つけられた時は自分の痛みを見つめながら復讐を考え、いつのまにか自分の心理分析することを覚えた。心はどうやったら痛いのか、傷口見つめて自分も誰かに同じことが出来るように考え抜いた。

例えば私が「どうしてこれはこうなるの?」と兄に聞いたとする。それに正面から答えず、「そうなるに決まってるじゃん!」と言って兄が立ち去ってしまうと、言われた方は「自明のことなのか?わからない自分がバカなの?」と考え込んでしまうでしょ?そんな単純なことで人を不愉快にできるんだよ。私はパターンを習得したら、必ず誰かに使うようにしていたんだよね。当然ターゲットはクラスの友達。もちろんそんなことばかりをしていたら嫌われるばかりだけど、あたし頭良かったからそれ以上に人を操ることができた。同い年の子供なんてチョロかった。

さすがに中学になって一度全員から無視されたけど、そこからいじめに発展させないコツだってもちろんわかってたから、つらかったけどがんばって切り抜けた。(がんばったうちに入るかね?)そりゃいじめのプロが、同じ年のガキどもにいじめられてる形でいるわけにはいかないからね。そんな妙なプライドを掲げて胸をはって学校いったよ。

何かされたらきっちり言葉で傷つけ、先生にも親にも絶対に言わず、話しかけてくる子には普通に返し、チャンスがあれば人を笑わせる。そんな当たり前のことで、私と一緒にいると楽しいと思う人が一人でも出てくれば、いじめる理由が少しずつなくせる。いじめに勝つためには、相手に満足感を与えないことが一番だからね。私が平然としていたら相手は不愉快、私としゃべる人が出てくれば不愉快、私が人を笑わせれば不愉快、私を傷つけようとして自分が傷ついたら不愉快、これを続けられれば、いじめる側の立場が無くなっていくの。

鍛えに鍛えられた私は人を言葉で傷つけるのが大得意だったからさ、やりすぎて友達に嫌われることはあっても長期的にいじめられることはなかった。どうしようもない能力だけど、武器として鍛えられたものは武器としてなら役に立つってことだ。

でもこの武器はさ、持っているだけで自分も傷つけるんだよ。心を蝕むんだよ。でも武器を捨てたら自分を守るものがない。他人に「守ってください」とか言える?他人に「私は弱いんで勘弁してください」とか言える?自分から弱いとこさらして、そこを突くなって期待する心が厚かましくすらあるよね?あたしなら弱点を晒されたら、すかさず突くよ。だから自分から弱点晒すぐらいなら、誰でも彼でも武器でばさばさなぎ払った方がいいに決まってるじゃない。

人を傷つける能力ってね、つまり人が言われたくないことを言うだけだからね、相手を分析する能力なんだよ。相手の心理状態とか。私はそれが得意なんだから、いいカウンセラーになれるかもね。